子宮筋腫

良性の腫瘍「子宮筋腫」とは

子宮筋腫とは、子宮の筋肉に生じる良性の腫瘍です。経腟超音波検査での発見が可能です。
30代女性の3人に1人、40代女性の2人に1人という割合で発症する、とても身近な婦人科疾患です。
女性ホルモンの影響で増大し、筋腫が大きくなると、過多月経や過長月経、不正出血などの症状を引き起こし、貧血をきたします。
日常生活に支障をきたしている症状がある場合には、治療を行います。悪性化のリスクは低いため、すぐに手術が必要になることはありません。定期的に経過を観察していく必要があります。

子宮筋腫ができる場所

子宮筋腫は、その発生する場所に応じて、以下のように分類されます。
筋腫ができる場所に応じて、症状が異なりますが、ほとんどの症例では自覚症状がありません。

漿膜下筋腫

子宮の外側にある漿膜の方向にできる筋腫です。

筋層内筋腫

子宮の筋肉の中にできる筋腫です。

粘膜下筋腫

子宮の内側にある子宮内膜(粘膜)の方向にできる筋腫です。

子宮筋腫は悪性化・がん化する?

子宮筋腫は、悪性化・がん化することはありません。超音波検査やMRI画像検査で子宮筋腫と診断された場合には、おおむね間違いないでしょう。しかし、超音波検査だけで子宮筋腫と診断されていたものの中には、子宮肉腫と言って筋肉の悪性腫瘍が隠れていることもあります。急速にサイズが大きくなっていくものは注意が必要です。また、筋腫が変化しているため画像検査では判断がつかず手術で摘出して、初めて診断がつくようなこともあります。
悪性化の心配がほとんどなく、自覚症状も少ない子宮筋腫ですが、このようなリスクが多少なりとも存在するために、必ず経過観察を続けていかねばなりません。

子宮筋腫の症状~痛みなどの自覚症状はあるの?~

子宮筋腫の多くは、自覚症状がありません。しかし、中には以下のような症状が出現し、日常生活に支障をきたすほど悪化することがあります。

月経量の増加

月経量が多くなり、血のかたまりのようなものが出ることもあります。
月経量には個人差がありますので、以前と比べて多くなった場合には、注意が必要です。

痛み

痛み月経時、またはそれ以外の期間に、腹痛、腰痛などの痛みが出ることがあります。

不正出血

月経以外の不正な出血、茶色っぽいおりものが出ることがあります。

貧血・めまい

貧血・めまい月経量の増加や不正出血によって、貧血、およびめまい、立ちくらみなどの症状が現れることがあります。

頻尿

膀胱が圧迫されることで、トイレに行く回数が増え、尿意を我慢することが難しくなる場合があります。

触ってわかるしこり

筋腫が大きくなった場合には、腹部を外から触ってしこりを感じられることがあります。

子宮筋腫ができる原因

子宮筋腫の原因について、未だはっきりしたことは分かっていません。
ただ、女性ホルモンの作用によって筋腫が大きくなることが明らかになっています。そのため、女性ホルモンが活発な若いうちは、筋腫が大きくなります。一方で閉経後には筋腫が徐々に小さくなり、それに伴い症状も和らいでいきます。(悪性の子宮肉腫の場合には、閉経後も大きくなることがあります)

子宮筋腫があると妊娠や性行為に影響する?

子宮筋腫があると妊娠や性行為に影響する?子宮筋腫があっても、それが小さくほぼ無症状であれば、妊娠・出産が可能です。ただ、子宮筋腫が大きい、小さくても粘膜下子宮筋腫で、月経血の量が多いなどの症状が強く出ている場合には、妊娠しづらい・流産しやすいということがあります。
また、子宮筋腫の大きさや位置によっては、性交時に痛みを伴うことがありますが、こちらはかなり稀なケースです。

妊娠したいのに筋腫の手術を勧められたとき

子宮筋腫の手術を受ける際に、手術後の子宮には回復期間が必要となり、数か月から半年ほどの避妊期間を提案されることもあります。足立病院では、年齢による妊娠率の低下を防ぐために、術後の避妊期間にも生殖補助医療を行うことができますので担当医にご相談下さい。

子宮筋腫の治療方法 手術は何センチから?

低用量ピルの服用

低用量ピルの服用によって、月経量を減らしたり、痛みを軽減したりすることが可能です。
また、筋腫の成長を止める、あるいは小さくすることも可能です。
偽閉経療法のように、骨粗しょう症のリスクが高くなることもありません。

偽閉経療法

子宮筋腫は、エストロゲンという女性ホルモンによって大きくなっていきます。この性質を利用し、GnRHアンタゴニストもしくはアゴニストと呼ばれるホルモン剤で一時的に閉経している状態をつくり、筋腫をできるだけ小さくする治療を「偽閉経療法」と呼びます。
ただ、骨粗しょう症のリスクが高まるため、半年間しか治療ができません。また、治療の中止によって筋腫は元の大きさに戻ります。
一般的にこの治療は、手術前に行ったり、また自然な閉経までのつなぎの治療として行われます。

手術(筋腫核手術、子宮全摘術)

子宮筋腫が大きい場合、症状が強く出ており日常生活に支障をきたしている場合には、手術を行います。
子宮を残す場合には筋腫だけを切除する「筋腫核出術」を、温存できない場合には「子宮摘出術」が行われます。

腹腔鏡下手術が適応される筋腫の大きさ

筋腫核出術の場合には、開腹手術か内視鏡下手術(腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)を選択することになります。一般に、直径7~8センチ以内の筋腫であり、かつ筋腫が子宮内腔から離れている筋層内筋腫や漿膜下筋腫の場合には、腹腔鏡下手術が可能になります。筋腫の直径が小さく、子宮内膜に向かって発育する粘膜下筋腫の場合には、子宮鏡下手術が可能な場合もあります。
しかし、筋腫が大きい場合、また複数の筋腫がある場合には、開腹手術を検討します。
術中の出血量が多くなりそうな場合には、自己血貯血を行い手術に備えることもあります。