性感染症(STD)

性感染症とは

性感染症性感染症とは、性行為によって感染する病気の総称です。一度でも性行為をしていれば、誰でも感染する可能性があります。
女性の性感染症の中には、自覚症状の乏しいものも多く、これにより気づかないうちに悪化したり、さらに感染を広めてしまったりするケースが見受けられます。
放置していると、大きく健康を損なってしまったり、不妊の原因になってしまうこともあります。正しい知識を身につけ、気になったときにはすぐに受診するようにしてください。それが、ご自身を、そして大切な人を守ることにつながります。

性感染症の主な症状

性感染症の症状女性の性感染症の代表的な症状としては、性器のかゆみ、おりものの増加・においの変化、不正出血などが挙げられます。
ただ、先述したように自覚症状がないものも少なくありません。性行為を経験したのであれば、「症状がないから感染していない」とは言えないのです。
症状に気づいたときはもちろんですが、パートナーの感染が判明したとき、リスクの高いことをしてしまったときには、必ず検査を受けてください。

どうやって感染する?感染する原因(感染経路)

性感染症の感染経路は、「性行為」です。性行為とは、セックスだけを指すのではありません。原因菌を含む粘液・血液が、性器・口・肛門・目、あるいは傷口などに触れることで、感染を起こします。
一方で、タオルや食器の共用、回し飲みといった、日常生活での通常の行為によって感染することはありません。これは、原因菌が空気中では生きてはいけないためです。「セックスをしていないから感染しない」というものではない点に注意しましょう。

性感染症の種類は何がある?

クラミジア

クラミジアトラコマティスが喉、性器へと感染すると、1~4週間の潜伏期間を経て、発症します。
おりものの増加、腹痛、不正出血などの症状が見られます。ただ、こういった自覚症状が現れるケースは少なく、気づかずに放置しているケースがほとんどを占めます。

淋病

淋菌が喉、性器へと感染すると、2~7日程度の潜伏期間を経て、発症します。
オーラルセックスで感染するケースが目立ちます。
おりものの増加くらいしか自覚症状がなく、これが発見の遅れにつながっています。

雑菌性尿道炎

雑菌が尿道に感染し、1~10日を経て発症します。
汚れた手で性器を触って感染するケースが多いようです。
女性の場合、まず自覚症状はありません。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルスに感染し、1ヵ月~1年の潜伏期間を経て発症します。性器、肛門のまわりにイボができ、多くはそれ以外に自覚症状がありません。ときどき、かゆみを伴うケースが見られる程度です。

エイズ(AIDS)・HIV

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、3ヵ月~数年の潜伏期間を経て本格的に発症します。
発症までは、外見上の健康な状態が続きますが、発症後は極端に免疫力が低下し、急激な体重の減少、下痢、ひどい寝汗といったさまざまな症状に見舞われます。適切な治療を受けなければ、命にかかわる事態となります。

梅毒

梅毒トレポネーマに感染し、約3週間の潜伏期間を経て発症します(第1期)。その後一度症状が消失しますが、数カ月後に再度さまざまな症状に見舞われます(第2期)。さらにその後、数年~数十年の無症状期を経て、第3期が訪れます。
第1期には、皮膚・粘膜に硬いイボ状の皮疹が生じます。多くは外陰部の近辺です。
第2期には、外陰部を中心に全身で皮疹・脱毛といった症状が起こります。その他、発熱、倦怠感などの症状も見られます。
そして第3期では、心血管や神経にも異常をきたし、皮膚・肝臓・骨に腫瘍ができたり、命にかかわる事態に陥ることもあります。(第3期が来るのは、全体の30%程度です)

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス1型または2型に感染し、3~7日ほどの潜伏期間を経て発症します。
ヘルペス病変部と接触することでうつります。
性器に、痛み・かゆみを伴う小さな水疱がたくさんできます。一度感染すると、ウイルスは体内に残り続け、死滅させることはできません。ただ、再発を予防することは可能です。

カンジダ

常在菌であるカンジダ菌が自己感染、あるいは性行為によって感染し、抵抗力が低下したときなどに増殖して発症します。
膣に感染した場合には、膣や外陰部のかゆみ、ヒリヒリ感、ポロポロとした白く濁ったおりもの、おりもの増加などが見られます。
その他、口腔などでも発症します。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

マイコプラズマ・ニューモニエに感染し、2~3週間の潜伏期間を経て発症します。膣に感染した場合の症状としては、おりものの異常、下腹部痛などが挙げられます。ただ、無症状であることの方が多くなります。
喉に感染した場合にはさらに無症状の割合が大きくなります。稀に、喉の痛み、違和感が見られます。

トリコモナス

膣トリコモナス原虫が感染し、1~2週間の潜伏期間を経て発症します。
タオルの共用、便器、お風呂などを介して感染することもあります。
外陰部の強い痒み、泡状のおりもの、黄色っぽいおりものなどが見られます。

一般細菌

どこにでもいる一般細菌の感染です。潜伏期間は、細菌により異なります。
発症すると、おりもんお異常、膣の痛み・かゆみなどを伴うことがあります。無症状のまま気づかないケースも少なくありません。

B型肝炎・C型肝炎

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染によって発症します。潜伏期間はそれぞれ、1~6ヵ月程度、2週間~3ヵ月程度です。
B型肝炎の場合、倦怠感、吐き気、頭痛、黄疸などの症状が見られます。また尿の色が濃くなっていき、重症の場合にはほとんど醤油のような色となります。一方でC型肝炎は自覚症状に乏しく、そのことが発見の遅れにつながっています。放置していると、肝硬変、肝臓がんに移行することがあります。こちらは性行為よりも、血液を介して感染することが多くなります。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスに感染し、約4週間の潜伏期間を経て発症します。
発熱、全身倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐などの症状を伴います。

性感染症の検査について

性感染症の検査には、以下のようなものがあります。

クラミジア・淋病

膣の内側を軽く擦り、採取した分泌物を調べる検査を行います。

カンジダ

性器に症状が現れている場合には、綿棒で菌を採取して検査にかけます。無症状の場合には、膣分泌液を採取して検査を行います。

ヘルペス・尖圭コンジローマ

病変部の細胞を採取し、ウイルス・細菌の検査を行います。

梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV感染症

血液検査による判定が可能です。
HIV感染症の場合には、さらに確認検査が必要になります。

性感染症の予防方法と対処の仕方

予防方法

性感染症の予防方法基本的なことさえ押さえていれば、専門的な知識がなくても感染リスクをかなり抑制することができます。性行為に及ぶ以上は、パートナーのため、またご自身、将来的な妊娠・出産を考えている場合には未来の赤ちゃんのためにも、しっかりと予防しましょう。

  • ピルを飲んでいる、ミレーナを使用しているといったことで望まない妊娠の可能性が少ない場合も、必ずコンドームを着用しましょう。
  • コンドームの説明書を読み、正しく着用しましょう。性行為が始まったときに着用するのが理想的です。
  • パートナーが装着したがらない場合も、よく話し合い、流されないようにしましょう。あなたの大切に思ってくれているパートナーであれば、しっかりと伝えれば協力してくれるはずです。
  • 出血の危険性のある性行為はしてはいけません。

対処の仕方

性感染症のほとんどは、早期に適切な治療を行えば、ほとんど問題なく治癒します。一方で、放置していることで悪化したり、感染を拡大させてしまうことがあります。
症状に気づいたときだけでなく、パートナーの感染が判明したとき、リスクの高いことをしてしまったときには、必ず検査を受けましょう。