男性不妊について
不妊症の原因の約50%は、男性側にあるとされています。
そもそも男性の「妊娠させる能力」は、「腟内射精ができること」、「精液内に運動能力・受精能力を兼ね備えた精子が十分に存在する(精液所見に異常がない)」の2つに分けられます。そして男性不妊の原因の約85%が、精液所見の異常です。
精液所見の正常・異常は、医療機関で検査を行わなければ判定できません。妊娠しないなと感じた時には、早期に男性が精液検査を受け、適切な治療方針を立てることが大切になります。
勃起障害・射精障害にも
対応します
勃起障害・射精障害があり腟内射精ができない場合には、問診・カウンセリングを行った上で、性機能の回復を目指す薬物療法、あるいは人工授精をおすすめします。
男性不妊になりやすい人の特徴
- 喫煙、お酒の飲み過ぎによって精子の質が低下している
- 肥満、運動不足、ストレス、精神的な問題によってホルモンバランスが乱れ、生殖能力が低下している
- 高温環境(サウナ、製鉄工場等での作業)や、長時間座っている仕事(トラック運転手、デスクワーク等)によって精巣の温度が上昇し、精子の形成に悪影響が及んでいる
- 有害物質や化学薬品に対する長期間の曝露によって、精子の質に悪影響が及んでいる
- 精索静脈瘤や性感染症など生殖器に関係する疾患によって、精子の形成や機能に障害が生じている
- 糖尿病や高血圧などの慢性疾患によって、ホルモンバランスや血流に悪影響が及んでいる
- 高齢である
男性不妊の原因ランキング
1.精索静脈瘤
精巣の静脈の拡張によって精巣の温度が上昇し、精子の生成・質に悪影響を及ぼすことがあります。男性不妊の代表的な原因と言えます。
2. 精子の異常
精子の数が少ない(乏精子症)、精子の運動能力が低い(精子無力症)、精子の形状が異常(奇形精子症)といったことが、受精の妨げになることがあります。
3. ホルモンの異常
低テストステロン、黄体形成ホルモン(LH)・卵胞刺激ホルモン(FSH)の異常といったホルモンバランスの乱れは、精子の形成に悪影響を及ぼすことがあります。
4. 無精子症
精液中に精子がまったく存在しない状態を指します。閉塞性の無精子症は精管の閉塞が原因です。非閉塞性の無精子症は精子が形成されないか、形成がきわめて少ないことが原因です。
5.性感染症
クラミジア感染症や淋菌感染症といった性感染症は、精路の閉塞、精巣・精管の炎症を引き起こし、不妊の原因となることがあります。
6. 抗精子抗体
自己免疫が精子を異物と捉え、攻撃を加え、精子の運動能力・受精能力を下げることがあります。
7. 先天的異常
クラインフェルター症候群などの遺伝的な染色体異常によって、精子の生成が妨げられることがあります。
8. 薬物や化学物質の影響
抗がん剤などの一部の薬物の使用、化学物質への曝露によって、精子の生成を妨げたり、質を低下させることがあります。
9. ライフスタイルと
環境要因
喫煙、お酒の飲み過ぎ、薬物使用、高温環境、ストレスなどは精子の質を低下させる原因になることがあります。
検査方法について
精液検査
精液検査では主に、精子の「数」「運動率」を調べます。
どちらにどのような問題があるのかが分かれば、妊娠のための適切な治療(タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精)の方向性が明確になります。精液検査は、月~土曜日の9:00~15:00の間に受付を行っております。検査の指示がありましたら、処置室で検査の手順の説明をいたします。
なお検査前の2~3日間は禁欲が推奨されます。
精子酸化ストレス(DNA
損傷度)測定
こちらは、精子の「質」に着目した新しい検査です。
「精子酸化ストレス分析機」によって、精液中の活性酸素レベルを測定します。これにより、精子酸化ストレス(精子のDNA損傷)の程度を判定します。
精子酸化ストレスが大きいと、胚の質が悪化し、妊娠率の低下・流産率の上昇につながる可能性があります。検査結果が良くない場合、生活習慣指導、サプリメント処方などを行い、精子の質の改善を図ります。
精子酸化ストレス測定は、精液検査と同時に実施することができます。
※自費の検査になります。
精液検査・精子酸化ストレス
測定の流れ
1予約と事前準備
検査は予約制です。検査の3〜5日前から、禁欲期間を設けます(性交やマスターベーションを避ける)。また、過度な飲酒や喫煙を控えるよう指示されることもあります。
2精液の採取
マスターベーションにより精液を採取します。避妊具やローションの使用は避け、すべての精液をカップに集めます。
自宅で採取していただいたものを2時間以内に持参していただきます。
3精液検査
提出された精液は、精子数、運動率、形態、精液量、pH、白血球数などの基本的な項目について分析されます。
検査結果は通常、当日中に報告されます。異常が見つかった場合は、精密検査が必要な場合があります。
4精子酸化ストレス(DNA
損傷度)測定
ご希望の方には、精子の酸化ストレス測定が行われます。
5診断とカウンセリング
医師から検査結果の詳細な説明が行われ、異常がある場合はその原因や治療方針についてカウンセリングを受けます。検査結果に基づき、必要に応じて生活習慣の改善、薬物療法、手術、または生殖補助医療(IVF、ICSIなど)などの不妊治療のプランを立てます。
6フォローアップ
必要に応じて一定期間後に再度精液検査やストレス検査を行い、治療の効果や状態の変化を確認します。治療中は定期的に医師とカウンセリングを行い、治療の進行状況や次のステップについて話し合います。
精液検査は保険適用?
精液検査は、不妊症の診断を目的とする場合に保険適用となります。ただし、保険適用の条件は医師の判断に基づくため、詳細はご相談ください。
泌尿器科へのコンサルト
精液検査の結果で異常が認められた場合、シンフォニア御池Ⅲ内にある泌尿器科専門クリニックへとコンサルトをいたします。
特に、精液中にまったく精子が認められない場合(無精子症)には、精巣からの精子の回収・凍結保存が必要です。
無精子症は大きく以下の2つに分類されます。
閉塞性無精子症
精巣で精子は生成されているものの、通り道(精管)が閉塞しており精子が出てこないために起こる無精子症です。
非閉塞性無精子症
精巣で精子が生成されないために起こる無精子症です。
無精子症の場合、精巣内の精子を回収し、顕微授精を行います(TESE-ICSI)。